地中海と大西洋を結ぶ大運河
17世紀、南仏の経済発展の基礎となる物流を助けるため、徴税師ピエール・ポール・リケが発案した、地中海と大西洋を結ぶ大運河計画。
当時大西洋から地中海にものを運ぶには、スペイン・ポルトガルのイベリア半島をぐるっと大回りする以外に航路がなかったため、スペインにジブラルタル海峡の通行税を支払わなければならなかったのです。ミディ運河構想は、時間と通行税削減のために考え出された一大プロジェクトでした。
総延長360kmの水路と、閘門(ロック)、水路橋、橋、トンネルなど328の構造物をもつミディ運河。1996年にユネスコの世界遺産に登録されたこの芸術的運河は、1667年から1694年にかけて建設、のちにカルカッソヌも通るようになりました。産業革命への端緒を開いたこの運河は、近代の卓越した土木工事の典型例です。
運河の発案者ピエール=ポール・リケが建築美と景観美にこだわったため、技術的に素晴らしいだけでなく、優れた芸術作品ともなりました。
この運河建設がいかに大事業であったかを理解するためには、標高差のあるこの地方を考えてみて下さい。まず標高のもっとも高い地点にサン・フェレオール貯水湖を築き、そこから引いた水をコントロールして、船を標高の高いところに通すためにフォンセランヌの7段の水門を設け、元々の自然の川を上に水の橋を通して立体交差にするなど…。当時の水力、地形測量、幾何学、建築技術のを結集したミディ運河は、今もなお人々の驚嘆の的となっています。
この運河の登場によって、南仏のワイン出荷量は飛躍的に増えたとも言われています。17世紀の産業革命を支えたミディ運河はしかし、鉄道の登場と共にその役割を終えます。現在では運河は観光客を乗せて遊覧船が行き来し、また船を引く馬が通った運河沿いの側道では、ジョギングや散歩を楽しむ人々で賑わっています。
カルカッソンヌ、トゥールーズへ行く際には是非とも見てみたい世界遺産です。
by France.fr編集部
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