ランスの「カゼルヌ・シャンジー 」で過ごす24時間

シャンパーニュ文化・遺産エンターテイメントとナイトライフ

シャンパーニュ地方、ランス大聖堂の素晴らしい眺めを独り占め。
© naiimdelalisiere - シャンパーニュ地方、ランス大聖堂の素晴らしい眺めを独り占め。

この記事は 0 分で読めます2020年1月12日に公開, 2024年1月22日に更新

アール・デコ様式で建てられ、ゴシック芸術の宝石を望む消防署は、ユネスコの世界遺産に登録されています。ノートルダム大聖堂の向かい側で25年もの間放置されていた「カゼルヌ・シャンジー」は、控えめに言って新たな注目スポットの一つ!旧シャンジー消防署はフランス王家ゆかりの歴史ある街の中心で、マリオットが手がけるオートグラフ・コレクションの一つとして、エレガントな高級ホテルに生まれ変わりました。フランスのライフスタイルを讃えた個性的な装飾は、シャンパーニュのぶどう栽培が行なわれているこの土地からアイディアを得たものです。

9時:大聖堂前の広場の歴史を知る

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ホテル&スパ「カゼルヌ・シャンジー」のエントランスを一歩外に出れば、ランスの街の歴史に浸ることができます。1926年に建築されたアール・デコ様式の消防署は1914〜18年の戦争に続くランスの街の復興計画の象徴でした。遊歩道を挟んだ向かいには、ゴシック芸術の宝石と称される大聖堂があります。ノートルダム大聖堂は20年の時をかけて一石また一石と積み直された復元を果たしました。大聖堂前の広場がかつてたたえていた輝きを取り戻すべく、戦後に急ぎ足で行われた修復作業の過程に埋もれた建築物の細部に留意する形で、周辺を含めた新たな景観づくりが検討されています。細部とは、ちょうど「ラ・カゼルヌ・シャンジー」のペディメントに「消防署(Sapeurs-Pompiers)」のレリーフが残されているようなもの。一風変わったホテルの看板です!

9時15分:ロビーで内装の素材について知る

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内装の素材、色彩、光の繊細な組み合わせの妙に浸ってみるならば、まずは、透かし細工が施されたオーク材の長椅子に腰掛け、コーヒーを一杯飲むのがいいでしょう。大きなガラス天井から柔らかな陽光が降り注ぎ、ぶどう栽培にオマージュを捧げた単色画のグリーンやベージュがかったピンクの色合い、素材の質感が織りなす変化が、この場所にサンルームのように静かで穏やかな雰囲気を与えています。かつて消防署だった頃にこの場所を満たしていた喧騒から遠く離れ、今ではのんびりと気持ちのよい隠れ家として生まれ変わったこの建物の数奇な運命に思いを馳せてみてはいかがでしょう。

10時:大聖堂と向かい合う

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スイートルームを含め89の部屋がある「カゼルヌ・シャンジー」。そのうち半数の部屋から、ノートルダム大聖堂を望むことができます。フランスの歴史的記念物であり、フランス王が代々ここで聖別の儀式を受けてきた大聖堂とじっくり向かい合うまたとない機会です! 視界いっぱいに広がる大聖堂の石に刻まれた豊かな表情は圧巻。その大部分が夜になるとプロジェクションマッピングを映し出す画面となるのです! 絨毯の破線模様のモチーフは、シャンパーニュ地方の丘陵を空から眺めたさまを思わせます。また照明にはシャンパーニュのボトルが用いられ、金色が際立つ柔らかな色彩のハーモニーはぶどう畑を想起させる空間を演出しています……。外装の繊細なシルエットは、シャンパーニュ地方の素晴らしい景色にインスパイアされ、建築に投影させたものです。

11時:絶景を楽しむ日光浴

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これほどの絶景を拒むことなどとても不可能。大聖堂を眺めながら日光浴をして過ごしましょう。石灰岩を照らす陽光の動きたどり、天井のアーチや弓形の壁に視線を滑らせると、そこにはダビデとゴリアテの戦い、あるいは最後の審判が繰り広げられています……。浴室のガラス壁には、墨と金が渦をなして配され、気まぐれな陽光と響きあいます。シャンパーニュの泡がひしめくように光を通すガラス壁には、不思議な水中世界が描き出されています。カロリーヌ・ドゥ・ボワシュー(Caroline de Boissieu)が手がけたこの作品は、この地方で盛んなステンドグラス・アートの一部をなしていると言っていいでしょう!

13時:「グランド・ジョルジェット (Grande Georgette)」のテーブルで

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「グランド・ジョルジェット」といえば「カゼルヌ・シャンジー」が消防署であった当時に活躍したはしご車の名前。その名を冠したブラッスリーは、大聖堂を望むテラス席を備えたゆったりとした佇まいです。内部には「カゼルヌ・シャンジー」の起源を思わせる遊びのある装飾が施されています。消防士のユニフォーム風にネイビーの地に赤い線をあしらった長椅子や壁、梯子を思わせるメタリックな構造など、消防署にまつわる要素が盛りだくさんです。また、料理にはこの土地の伝統が取り入れられており、ランスのハムや、フルール・ド・シャンパーニュと蜂蜜風味のリ・ド・ヴォー(子牛の胸腺)の煮込みなどを味わうことができます。

15時:王侯気分でスパ体験

Deep Nature
© Deep Nature

ガラスと鏡のきらめき、素材のありのままの色味を生かした繊細な組み合わせの妙……。「ディープ・ネイチャー(Deep Nature)」のスパは、「カゼルヌ・シャンジー」のとびきりの癒しとなっています。満々と水をたたえたプールにハマム。泡の弾けるリズムに身をまかせる「ソワン・デ・ロワ(soin des Rois)」は「王侯たちのケア」を意味するスパ・コースです。115分間たっぷりかける施術では、ワインやぶどうの成分を取り入れた「ヴィネズィム(Vinesime)」のコスメティックを用いたトリートメントが行なわれます。原材料は、ぶどうの搾りかす、種子、果実など……グラン・クリュの滑らかさを彷彿させるものばかり!

19時:中庭でアペリティフを

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穏やかな宵には、時間を忘れて中庭でアペリティフを楽しみましょう。5500 m²の敷地面積を誇る「カゼルヌ・シャンジー」に中庭を作ったのはじつに正しい判断です。灰青色の外壁と呼応する色合いの調度類はモダンな曲線を備え、もともとこの建物に使われていた白い石や丁寧に復元したレンガとも互いを引き立てあっています。中庭にある地上25メートルの大きな塔は、イタリアの鐘楼に着想を得て建設されたもの。かつて消防ホースの乾燥に使われたこの塔は、辺りを見張るようにそびえ立っています。明日はここに登ってランスの旧市街と大聖堂を一望してから、大聖堂の内部を探検しにでかけましょう……。

by アンヌ=クレール・ドゥロルム

旅行ジャーナリスト

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