エクス・アン・プロヴァンスの田舎町にあるカリソン工房「ル・ロワ・ルネ」は、扉を開いて皆さんのことをお待ちしています。南仏のクリスマスで供される伝統の「十三菓」(13 desserts、菓子やドライフルーツなど13種の盛り合わせ)にも用いられるこのアーモンド風味のお菓子。味わうだけで、プロヴァンス地方を旅している気分になってしまいます。
いにしえに起源を持つ菓子
カリソンは15世紀からプロヴァンスっ子たちの舌を喜ばせてきました。地元の言い伝えでは、時の王ルネ・ダンジュー(ロワ・ルネ)の菓子職人が、1454年、君主の婚礼のため、このアーモンドをベースにした菓子を作り上げたと言われています。若き王妃ジャンヌ・ドゥ・ラヴァルがこの砂糖菓子の名を尋ねると、職人はプロヴァンス地方の言葉で「Di calin soun」、つまり「抱擁」という意味だと答えました。
アーモンド、メロンのコンフィ、砂糖
カリソン・トラディショネルを作るのに欠かせない3つの材料は、地中海沿岸で採れるアーモンド、アプトの町の名産であるメロンのコンフィ(甘露煮)、そして砂糖のシロップです。ル・ロワ・ルネは、オレンジのコンフィを少々加えた個性的なレシピのカリソンを作っています。
ほのかに香りづけしたペースト
カリソンの柔らかな土台となる黄色いペーストは、果物のコンフィと余分なものを取り除いたアーモンドを細かく砕いたものに熱したシロップを加え、水分を飛ばしながら練りあげて作ります。カリソンの特徴である香りの正体は、工房で精製されたビターアーモンドのエッセンシャルオイルであり、これを少々ミキサーに加えるのです。カリソンのペーストは、それから3日間休ませたのち、工房で包装され、カリソンの販売業者の手へと渡っていきます。
カリソヌーズと手による仕上げ
「カリソヌーズ(calissonneuse)」はカリソンの製造機のこと。この機械で、薄く伸ばしたマジパンの上に置いたカリソン型にペーストを絞り出していきます。その表面にヘラを使ってグラサージュ(糖衣)を施す工程、カリソンを型から外す工程は手で行なわれます。
苺&バジル、セドラ&チョコレート
カリソン・ミニアチュールは、さまざまなフルーツ味、あるいは、魅惑のカシス&ティムットペッパーのような繊細な取り合わせなど、伝統にとらわれない特別コレクションです。地元の星付きシェフが生み出すカリソン・ミニアチュールは、好奇心たっぷりな人びとを虜にしています。
13.3グラムの甘い幸福
ル・ロワ・ルネのカリソン・トラディショネルとカリソン・ミニアチュールは、人の手で選別され、包装されます。形がいびつなもの、糖衣が流れてしまったもの、割れているカリソンは弾かれます。エクス・アン・プロヴァンスで作られる三分の二のカリソンは、ル・ロワ・ルネによるものです。1630年から毎年9月の第一日曜日には、サン・ジャン・ドゥ・マルト教会で、カリソンを祝別する儀式が行なわれます。
いろいろな形状のカリソン
エクス・アン・プロヴァンス近郊、ローニュで採れる石材で作られた工房は、アーモンドの若木の農園の真ん中にあります。敷地内には、ありとあらゆる種類のカリソンを買うことができるショップがあります。伝統にとらわれないさまざまな味のカリソン、タルトの土台やシャーベットを個性的な味わいにしてくれるクリーム状のカリソン、お菓子にふりかけるための粒状のカリソン……。 カリソン作りの歴史を紹介するミュージアムもお見逃しなく。かつて用いられていたカリソンの製造機や、時代ものの写真の数々が展示されています。ミュージアムを訪ねれば、1920年創業のル・ロワ・ルネが、アーモンドをベースにしたプロヴァンス地方のもう一つの名産菓子、ヌガーでも知られていることがおわかりいただけることでしょう……。
さらに詳しく ・カリソン工房「ル・ロワ・ルネ」、カリソン博物館公式サイト(英語) 入館無料、毎日開館。 カリソン作り体験を含むガイドツアーは、毎週水曜日10時半~と15時~行っています。 カリソン職人による2時間ワークショップは要予約。毎週土曜日10時半~12時半、15時~17時、大人55ユーロ、18歳未満は35ユーロ。2名様より開催いたします。 11 Rue Gaston de Saporta, in Aix-en-Provence ・エクス・アン・プロヴァンス観光局サイト(英語) ・プロヴァンス観光局サイト(英語)
おすすめ記事: プロヴァンスの秋の味覚を料理できる6アドレス
by Cabon Charlotte