美食の渓谷で過ごす4日間のグルメ旅

旅行日程

ブルゴーニュヴァレ・ド・ラ・ガストロノミー 美食の渓谷リヨン美食とワイン村&田園地帯都市

  • 時間4日
  • ステップ4ステップ

ブルゴーニュのコルトンの丘
© CRM - ブルゴーニュのコルトンの丘

この記事は 0 分で読めます2025年4月3日に公開

「ヴァレ・ド・ラ・ガストロノミー(美食の渓谷)」は、ディジョンからマルセイユまで続く美食の旅路。ワインや郷土料理、職人の技に触れながら、フランスの食文化を五感で堪能できます。4日間で、北部のディジョンからリヨン周辺を巡るルートは、グルメと出会いが詰まった体験。食の真髄に触れる贅沢な旅です。

1日目 : ディジョン

Dijon, France
ブルゴーニュ地方ディジョンにあるミュロ・エ・プティジャンのブティック
© CRM - ブルゴーニュ地方ディジョンにあるミュロ・エ・プティジャンのブティック

ブルゴーニュ地方の主都ディジョンは、その中心に堂々と構え、地域の宝物や特産品の魅力を広く発信しています。
まずは、歴史ある歩行者専用の旧市街をぶらりと歩いてみましょう。そこには、創業1845年の「マイユ(Maille)」のブティックがあり、金文字の看板がひときわ目を引きます。
この老舗では、シャルドネやトリュフ、はちみつ入りなど、多彩なディジョンマスタードの試食・購入が可能。一部のマスタードは、昔ながらのポンプ式でサーブされるのも魅力です。

近くには、ブルゴーニュ産のマスタード種のみを使用し、石臼で製造を続ける「ファロ Fallot」のブティックもあります。こちらの本拠地はボーヌにあり、1840年から続くマスタード作りの工房見学も可能。臨場感あふれる製造工程の見学は必見です!

さらに数本通りを進むと、今度は甘い香りが漂ってきます。
そこにあるのは、1796年創業、10代目が継ぐ老舗「ミュロ・エ・プティジャン Mulot et Petitjean」の美しい格天井の店。看板商品は「パヴェ(le pavé)」と呼ばれる四角いパン・デピス(香辛料入りパン)。朝食にバターを塗っても美味しいですが、フォアグラとの相性も抜群です。オレンジやカシスのジャムが入った柔らかな「ノネット」は甘党に人気の一品。

このカシス(黒すぐり)は、ブルゴーニュを代表するもうひとつの特産品。
キールに使うリキュール「クレーム・ド・カシス」だけでなく、ジャムや「カシスバター」としても楽しまれます。カシスバターとは、甘さ控えめでクリーミーな濃厚ジャムのようなもので、羊のチーズにぴったり。こうした逸品は、旧市街の高級食材店「グラン・ド・カシス」でも手に入ります。

グルメ散策の締めくくりにおすすめなのが、ディジョンの新名所ワイン博物館「シテ・デ・クリマ・エ・ヴァン Cité des Climats et vins de Bourgogne。ここでは、ブルゴーニュワイン学校によるワイン講座も開かれており、銘醸ワインの秘密に迫ることができます。その後は、南のブドウ畑へと旅を続けましょう。村名ワインからグラン・クリュまで、ワインの奥深さを体感できます。

そして一日を締めくくるのは、この施設内にある「フードコート le Food Court 」。ブルゴーニュの最高品質の食材がそろい、国家最優秀職人章(M.O.F.)の監修による店が集まります。
チーズやシャルキュトリー、シーフードプレートなど、アペリティフメニューが豊富。なんと「マスタードのメリーゴーラウンド」まであるんです!
お土産にテイクアウトして、「ワインの洞窟」で味わうのもおすすめ。天井までびっしりと並んだワインボトルの中には、ブルゴーニュだけでなく、フランス国内外の銘酒がずらり。美味しい食事を囲んで語らう時間――それこそが、まさにフランス流の贅沢です。

2日目 : ブルゴーニュのブドウ畑

Colline de Corton, Pernand-Vergelesses, France
ブルゴーニュのブドウ畑をめぐるサイクリングルート La Voie des vignes
© CRM - ブルゴーニュのブドウ畑をめぐるサイクリングルート La Voie des vignes

旅は、さらに南へと続きます。
次なる目的地は、ブルゴーニュのブドウ畑です。ジュヴレ・シャンベルタン Gevrey-Chambertin、モレ・サン・ドニ Morey-Saint-Denis、ヴォーヌ・ロマネ Vosne-Romanée、ポマール Pommard、ムルソー Meursault…ワイン好きにはたまらない村々が点在し、ブルゴーニュにはなんと3,577もの家族経営のワイナリーがあります。
2015年にユネスコ世界遺産に登録された「ブルゴーニュのクリマ(Climats)」の魅力や、極小区画に分かれた独特なブドウ畑の文化にも触れることができます。

そんなワインの世界にどっぷり浸るには、電動自転車でのサイクリングがおすすめ。アクティブ・ツアーズ Active Toursでレンタルして、ガイド付きでも自由にでも出発。
石垣や小屋 (cabottes) に囲まれた風景の中、葡萄畑を縫うように走れば、馬や農業機械が働く様子も見られます。

夕暮れ時、黄金色に染まるブドウ畑をあとにして、自転車をレトロなフォルクスワーゲンのワゴン車に乗り換えるのも一興。
コルトンの丘にあるホテル・レストラン「エルミタージュ・ド・コルトン」のクラシックカーで、1970年代の雰囲気漂うドライブを楽しめます。
立ち寄った先ではもちろん、ワインの試飲も。ワイナリーの扉を開けば、樽やボトル、ブドウ品種、香りに包まれた特別な時間が待っています。

ピュリニー・モンラッシェ Puligny-Montrachet では、19代目のジュリー・ルフレーヴ Julie Leflaive が迎えてくれます。彼女の父、オリヴィエ・ルフレーヴ Olivier Leflaive の名を冠したこのドメーヌは、ワイン観光の先駆者としても知られ、訪問者を食卓に迎え、宿泊施設まで開いたことで知られています。ブルゴーニュの豊かなワイン文化と、その背景にある人々の想いを感じられる貴重な体験がここにあります。

3日目 : ボジョレー地方の中心部で

Theizé, France
ボジョレー地方 ソリュトレの岩
© CRM - ボジョレー地方 ソリュトレの岩

ブルゴーニュを後にし、「美食の渓谷」の中心に位置するオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地域圏、ボジョレー地方へと旅は続きます。サン・タムール、ジュリエナ、モルゴン…ここでも、村の名前を聞くだけで味覚が刺激されるような土地です。リヨンの西わずか数キロの場所に広がるボジョレーの丘陵地帯は、自然豊かな風景が魅力。特に南部に広がる「黄金の石(ピエール・ドレ)」の地域では、鉄分で酸化した石灰岩の家々が、陽の光を浴びて美しいオークル色に輝きます。

この丘をめぐるなら、電動マウンテンバイクでの散策がおすすめ。Anna Purna Adventure という現地のアクティビティ会社でレンタルでき、起伏のある道でも気軽に楽しめます。丘の向こうには300以上のシャトーが点在し、その多くは個人所有で特別な時にしか一般公開されません。

黄金の村々では、ワイナリーを訪ねて生産者に出会い、彼らのワインを味わうことができます。ボジョレー地方では、房ごとマセラシオン(醸し)する独特の伝統が今も守られており、「ボジョレー・ヌーヴォー」だけでは語り尽くせない奥深さがあることを知るでしょう。たとえば、ドメーヌ・ド・ラ・クリジーユでは、ワイン樽の並ぶシャイ(熟成庫)に、次回の村祭りで使う山車が保管されており、地域の伝統と生活が密接に結びついていることが感じられます。

ランチはリュスネ村のレストラン「ブール・ノワゼット Beurre Noisette」へ。地元出身のポリーヌが旬の食材で彩るフランス料理を手がけ、チョリソ入りの塩味フレンチトーストなど、伝統に遊び心を添えた一皿が楽しめます。夫のオリヴィエはサービス担当で、美味しいひとときを丁寧にサポートしてくれます。

4日目:リヨン

Lyon, France
リヨンのレストラン「ダニエル・エ・ドニーズ」のシェフ ジョゼフ・ヴィアラ氏
© CRM - リヨンのレストラン「ダニエル・エ・ドニーズ」のシェフ ジョゼフ・ヴィアラ氏

最終日はリヨンへ!
古代には「ルグドゥヌム Lugdunum」と呼ばれ、今もなお「フランス美食の都」として誇りをもつ街です。ローヌ川とソーヌ川の合流地点に位置するリヨンは、「美食の渓谷」における技と味の交流地として、古くから栄えてきました。

朝の食欲を刺激するなら、老舗ショコラトリー「ベルナション Bernachon」へ。街中にあるこの工房は70年以上の歴史をもち、店内の厨房では職人たちがチョコレートや洋菓子づくりに励む様子を間近で見ることができます。
銅鍋の並ぶ工房で、混ぜる・削る・切る・コーティングする・飾る・包装する──その一つひとつの動きに無駄がなく、見惚れるほどの手仕事です。
隣接するサロン・ド・テで濃厚なホットチョコレートを味わい、仕上げにブティックで名物「パレ・ドール le palet d’or(金箔をあしらった丸いショコラ)」をお土産にどうぞ。

昼食は、リヨン名物「ブション(Bouchon)」へ。
これは地元の郷土料理を提供する伝統的な食堂で、公式の認証ロゴが店頭に掲げられています。
プレスキル地区のコルデリエ Cordeliers 界隈にある「カフェ・デュ・ジュラ Café du Jura」は、赤いギンガムチェックのテーブルクロスと木の内装が昔ながらの雰囲気。サラダ・リヨネーズ、アンドゥイエット andouillette 、川カマスのクネル quenelles 、セルヴェル・ド・カニュ cervelle de canuts など、リヨン料理の王道が揃います。

もうひとつの人気店が「ダニエル&ドニーズ les bouchons Daniel & Denise 」。パテ・クルートの世界チャンピオンでもあるシェフ、ジョゼフ・ヴィアラ Joseph Viola が手がける3つの店舗では、本格的なリヨン料理を味わえます。事前予約をすれば、シェフ直々の料理教室に参加することも可能です。

午後の締めくくりには、リヨンの食の殿堂「ポール・ボキューズ市場 Halles Paul Bocuse 」へ。ここには地元の最高峰の職人たちが集い、まるで高級マルシェのような空間が広がります。肉屋、魚屋、パン屋、八百屋と、名人揃い。たとえば、ボボスのピスタチオ入りソーセージ、メール・リシャールのサン・フェリシアンチーズ、ジロデ Giraudet のクネル、ピュピエ Pupier のスモークサーモン、そしてスイーツならヴォワザン Voisin のリヨン名物「クッサン・ド・リヨン Coussin de Lyon」や、セーヴ Sève のプラリネタルトは外せません。

地元のアペリティフを試したい方は、「ニンカシ brasseries Ninkasi 」へ。1997年にリヨンで創業したこのクラフトビール醸造所では、常時15種類ほどのビールに加え、シャルドネ樽で熟成させたウイスキーも製造しています。リヨン市内に10軒あるブリュワリーでは、グラス片手にハンバーガーを味わいながら、ライブ音楽を楽しめることも。
美食と音楽に包まれた、リヨンの夜を満喫してください。

by Revol-Maurel Caroline